ダイヤモンド類似石・天然鉱物
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まめ知識
ダイヤモンドの類似石と呼ばれるのは、加工されているものだけではありません。
天然の鉱物もダイヤモンド類似石になり得ます。
では、どのような天然鉱物がダイヤモンド類似石になるのでしょうか。
天然のダイヤモンド類似石
天然鉱物で無色のダイヤモンドの代用品になるものは稀です。
天然の鉱物にはどうしても微量な不純物が混じって、その効果として色が付いてしまうからです。
最古のダイヤモンド類似石は石英(二酸化ケイ素の一形態、黒曜石、天然ガラス、ケイ砂といった形態になることも)、水晶(二酸化ケイ素の結晶)、トパーズ、緑柱石(ゴシェナイト)です。
これらは比較的ありふれている鉱物で、モース硬度もある程度 (7-8) あります。
ですが屈折率が著しく低く、それに対応して分散もまた乏しいのです。
しばしば「ダイヤモンド」の名を付けられ流通する非常に透明度が高い良質の水晶に、ニューヨーク州ハーキマー郡で産出される、いわゆる「ハーキマー・ダイヤモンド」があります。
このほか、トパーズの比重 (3.50-3.57) はダイヤモンドのそれに収まります。
ジルコン
歴史的に見れば、もっとも注目すべき天然ダイヤモンド類似石はジルコンです。
これは相当に硬い(モース硬度7.5)といったこともありますが、もっと重要なのは高い分散値 (0.039) を有しており、カットすることでかなりのファイアが見られることです。
無色透明のジルコンはスリランカで2,000年前から採掘されています。
現代のように鉱物学が発展する以前は、無色透明のジルコンは成長一歩手前のダイヤモンドであると信じられ、産地名から「マタラ・ダイヤモンド」と呼ばれていました。
ジルコンは今でもダイヤモンド類似石としてたびたび市場に出ることがありますが、異方性であり強い複屈折 (0.059) が見られる点から簡単に区別できます。
またかなり脆弱なことでも有名で、ガードルファセットの稜線に磨耗がよく見られることでもわかります。
マニア向け珍品
無色のジルコンほどではないですが、無色透明の灰重石(タングステン鉱)もまた天然ダイヤモンド類似石の一つです。
分散値 (0.026) は高く、模倣ダイヤモンドに用いられるだけの値を示すものの光沢が強すぎ、またモース硬度 (4.5-5.5) があまりに低すぎて、良質な研磨が出来ません。
光学的には異方性で複屈折を有し、さらに比重がかなり大きい (5.9-6.1)です。
チョクラスキー法で人工合成された灰重石もありますが、それがダイヤモンド類似石に用いられることはほとんどありません。
宝石質の天然灰重石がほとんど産しないだけに、人工合成灰重石は、ダイヤモンドよりむしろ天然灰重石のニセモノとして出回るのです。
似たようなケースに斜方晶系の白鉛鉱(炭酸鉛)があります。
この石はとてつもなく壊れやすく(4方向のへき開面に対して脆い)、さらには柔らかい(モース硬度3.5)のでジュエリーに使用される例はまずありません。
カットがとても難しく、宝石コレクションに並んでいるのをたまに見かける程度です。
宝石質の白鉛鉱は、高い屈折率 (1.804-2.078) と分散値 (0.051) からダイヤモンド光沢を呈し、宝石マニアには珍品として高い評価があります。
しかし、その柔らかさとは別に高い比重 (6.51) や異方性から来る高い複屈折率 (0.271) からも簡単に見分けがつくのです。
天然の鉱物のダイヤモンド類似石は、一方でなかなかの珍品である可能性もあります。
しかしながら一般的にはジルコンが主流でしょう。
最近ではジルコンや、以前お話したキュービックジルコニアが多くありますね。
本物のダイヤモンドと並べて観察してみてはいかがでしょうか。
引用参考:ダイヤモンド類似石
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