ダイヤモンドをより美しく魅力的に・・・研磨の秘密
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ダイヤモンドの基礎知識
ダイヤモンドの研磨について
第二次世界大戦以前までは、ダイヤモンドの研磨工業は、ベルギーのアントワープとオランダのアムステルダムが中心でした。しかし、大戦中にこの地の研磨職工たちの多くが、アメリカに疎開し、移住してしまいました。
現在ではニューヨーク周辺、アントワープ、アムステルダム、およびイスラエル、ドイツ、イギリス、南アフリカ連邦など世界各地に研磨工場が散在しています。
日本にも山梨県の菲崎にアジア第一といわれるダイヤモンド研磨工場があります。これは、原石を海外のバイヤーが持参し、ここで研磨させ、そのまま母国へもって帰るという方法をとっております。いわば、ダイヤモンド研磨の下請工場のようです。
また、それぞれの工場で研磨する原石の大きさが専門化されており、たとえば大粒の原石は、ニューヨークやアントワープ、アムステルダムで行い、サンド・メレーなど小粒の原石はドイツ国内で研磨を専門にしています。
カットの移り変りについて
現在では、ダイヤモンドのカットのデザインは、みなさんもご存知のように美しい輝きを放つブリリアント・カットが過半数を占めています。しかし、ブリリアンカットなどの研磨の技術が、最初から考え出されていたわけではありません。
ダイヤモンドのカットのデザインの移り変わりは、人類がダイヤモンドをいかに美しく魅力的に表現できるかを考えて試行錯誤していった歴史と言っても過言ではないでしょう。
ダイヤモンドは、炭素の結晶体ですが、軸の方向によって硬度が異なります。人類が考え出した最初の幾何学的なカットは、ダイヤモンドの結晶の中でもっとも軟らかい方向の発見からスタートしたのです。つまり、テーブル・カットという方式がそのものです。
それは、八面体の結晶の頂点から研磨をはじめて、だんだんと深く進めていき、かなりの大きさの四角形の面が現れるまで研磨したものです、この方向がダイヤモンドの結晶の中で一番軟らかい方向であると考えられています。
バラのつぼみのような形をしたローズ・カットです。このカットが発見されたのが1520年頃で、底が平らで、上が12個あるいは36個の三角形のファセットで取り囲まれた形のカットです。ダイヤモンドは8面体のほかに12面体とか6面体の結晶としても産出されます。12面体の結晶からテーブルやローゼンツカットをすると損失が多い。12面体の結晶を生かすためにローズ・カットが考え出されたともいわれています。
【参考として】
ダイアモンドカットの種類
ブリリアント・カットの誕生
17世紀の末期、ブリリアント・カットがベニスの宝石商ベルッジーによって考え出されました。カットの歴史の中で革命的な技術の発見であり、ダイヤモンドの美しさも、ファイヤーと呼ばれる虹色の輝きも、このカットの発見によって、はじめて本格的にひきだされたのである。この効果は、従来のカットに比べて圧倒的に輝きなど魅力が違うので、当時の人々は争って自分達のもっていたダイヤモンドをブリリアントカットにカットしなおしました。再カットすることによって、失われるダイヤモンドの値打ちより、ブリリアント・カットの魅力的な美しさにはかなわなかったのでしょう。
ファイアーの原因
カットしたダイヤモンドがもっているファイアーという名で呼ばれる虹色の輝き・きらめきは、ダイヤモンド宝石の生命です。これはダイヤモンドのもつ特殊な光学的性質からくる現象です。ダイヤモンドは天然に産する鉱物の中でももっとも高い屈折率(2.42)を持つものの一つです。屈折率が高いと物体の反射率も高くなる。そのためダイヤモンドの結晶は、磨かない状態でも特有のよい光沢を持っています。しかし、ダイヤモンドの真の輝き・きらめきがでてくるのは、今のところブリリアント・カットした場合です。 ブリリアンカットによってはじめてダイヤモンドの結晶中で光の全反射が起こるからです。ブリリアント・カットのファセットは全反射が起こるような角度でカットされている。 そのため、入射光は屈折してカットの底や側面にあたり、反射して再び上の面から抜け出していく。また、屈折率は光の波長によって違うので光の分散(分光)が起きます。入射した白色光を作っている赤色から紫色までの光は、光がダイヤモンドの中を通る間に分散し、屈折光として外に出るときは、虹色としてあらわれてくるわけです。
【参考文献】
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